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2010年6月 9日 (水)

DARRYL WAY'S WOLF / Saturation Point

Saturasion_point


 ウルフは1973年、カーブド・エアからヴァイオリンをもっと弾きたくて脱退したダリル・ウェイによって結成されたインストバンドである(ヴォーカルが入っている曲がないことないのだが…)。メンバーはギターにジョン・エサーリッジ、ドラムがイアン・モズレー、ベースにデク・メセカーという布陣で、当時は全くの無名なミュージシャン達だったが、ウルフ解散後にそれぞれソフト・マシーン、トレース、キャラバンといったバンドを加入するのだから、実力的には指折りの面々であった。
 アルバムは3枚ほど残したが、やや方法論として行き詰まった感のある3作目「Night Music」はともかくとしても、残りの2枚については、ヴァイオリンをフィーチャーしたロック・アルバム…、否、非ジャズ系のインスト・プログレの傑作といってもいい仕上がりだったと思う。

 さて、本作だが1974年に発表された第2作である。1作目の「Canis Lupus」はプロデューサーにキング・クリムゾンのイアン・マクドナルドを招聘して、全体としてはリリカルな叙情性と暴力性が奇妙に交錯する作品だったが、本作はよりメンバーの音楽嗜好をビビッドに反映させ、クラシカルセンス、ジャズ的なセンス、そしてテクニック至上主義のようなものが曲毎に明らかになったところに特徴があった。
 それは「The Ache」「Saturation Point」「Toy Symphony」という3つの曲に結実されているといっていいだろう。「The Ache」では、ヴァイオリンとギターの執拗なユニゾンといい、その間隙をぬうように現れる短いソロのテクニカルさといい、このバンドの技術的な水準の高さを見せつけるような曲になっているし、「Saturation Point」ではジョン・エサーリッジがフィーチャーされたソフト・マシーンやブランドXを思い起こさせるジャズ・ロック、叙情性と激しいテンションが一体となって文字通り「ちいさなシンフォニー」を形成している「Toy Symphony」のクラシカル・センス....といった具合である。

 ついでにいえば、本作はこの3曲の傑作に加え、いまひとつの名曲「Slow Rag」がある。日本人好みのメランコリックな旋律に、アコギとヴァイオリンの洗練されたインタープレイを織り込んだ、本作でも一際忘れがたい曲になっている。今ではあまり忘れられてきているが、この曲はたかみひろし氏の強烈な愛好振りによって、日本版のウルフのベスト盤に収録され、少なくとも日本においては「ウルフの不動の名曲」になったものだ。
 という訳で、この4曲でもって本作は、アルバム自体が傑作と呼ぶに相応しい佇まいを持つに至ったと思う。前作の「悲しみのマクドナルド」に匹敵する名曲が本作にはない…という指摘は当時からあったけれど、その点は認めつつも、トータルな意味では本作の方が上回っているのではないか、少なくとも私はこちらのアルバムの方をかれこれ30年以上愛好しているのだか....。

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