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2010年5月13日 (木)

PINK FLOYD / A Momentary Lapse Of Reason

A_momentary_lapse_of_reason

 ご存じ再結成フロイドの第1作である。87年の発表だから、ギルモアのソロ第2作「狂気のプロフィール」の3年後のということになる。個人的な印象としてはもっと間隔があったような記憶もあるのだが、意外に短かったのだ。この3年の間にギルモアはソロ・アーティストとしては、思ったほど成功を獲得することが出来ず(ロジャー・ウォーターズも「ヒッチハイクの賛否両論」で同様の経過を辿る)、結局というか、早々と「自分の立脚点はあくまでフロイドのギタリストが基本」という結論に至ったのだろう。「狂気のプロフィール」という作品は音楽的なクウォリティは高いし、仕上がりそのものも悪くはないと思うが、やはりあの作品には圧倒的に「音楽的な動機」が不在だったと思う。

 再結成フロイドを企画するに当たって、ギルモアがウォーターズに声をかけたのかどう
か私はよく知らないが、いずれにしてもウォーターズは不在のまま、フロイドはほとんどギルモアとボブ・エズリンのプロジェクトのような形で進んでいく(ニック・メイソンやリック・ライトがかつてのアルバムのように本作に関わっていないのは周知の事実)。なんのことはない、端からみれば本作はほとんど「狂気のプロフィール」の続編のように制作されたのだ。ただし、それは端から見ればの話で、当然ギルモアの内部ではその事情は全く違っていたのであろう。なにしろ、今度は「狂気」や「ウォール」を作ったフロイドという看板を実質的にひとりで背負うのだ。しかも、ウォーターズというコンセプト・メーカーは既にいない。そのプレッシャーたるや並大抵のものではなかったはずだ。

 こうしたプロセスで出来上がったこの「鬱」というアルバムは、「狂気」から「アニマルズ」までのフロイド作品で、ギルモアが関わったであろう部分の総決算のような仕上がりになった。意味深なムード、浮遊感、エレクリックな空間、また一方でエッジの切り立った重量感のサウンドやブルージーなムードといった具合である。以前に書いたとおり、フロイドはこうしたサウンドを「ウォール」以降ほとんど切り捨てていたが、87年といえばニュー・ウェイブ以降のサウンドが一段落した時期であり、あまたのバンドが再結成していたり、見直されたいた時期であったことも追い風となって、このアルバムのサウンドは当のウォーターズから「イミテーション」といわれ、ある種のファンからは「焼き直し」と非難を浴びつつも、大成功を収めることになる。

 実際、このアルバムは良く出来ていると思う。とくに旧A面の5曲は「狂ったダイアモンド」を思い起こさずにはいられないイントロダクションの「生命の動向」、続く「狂気」あたりのダークなサウンドを思い出させる「幻の翼」「戦争の犬たち」の完成度の高さ、「理性喪失」と「現実との差異」と披露されるフロイドらしからぬ伸びやかなでダイナミックなサウンドは、どれも秀逸としかいいようがない仕上がりで、個人的には「最良のフロイド」のひとつに数えたいくらいである。また、旧B面で比較的長目の3曲をインターリュードのような短い曲で繋げた組曲のような構成も、多少間延びした感もあるが悪くない。ともあれ、フロイドはこうしてウォーターズからギルモアへと主権移譲がなされたのだ。それはもう歴史になったともいえる。そのあたりで起きたメンバーの相克も含め、個人的には興味がつきないアルバムである。

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