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2010年4月28日 (水)

DAVID GILMOUR / About Face

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 前作から6年後に発表された84年セカンド・ソロ作品。この間にフロイドは実質解散状態となっていることもあって、おそらくギルモアとしても、本作でソロ・アーティストとして独り立ちを期しての作品だったんだろう。プロデュースにボブ・エズリンを招聘し、随所に当時の「売れ筋」の要素を取り入れ、「フロイド的楽屋落ち」でない音楽を作ろうとしている意欲を感じる作品になっている。個人的には初めて聴くことになる作品だ。

01. Until We Sleep
 いきなりテクノっぽいリズムで始まるのが意外。本作の2年後に出ることになるウォーターズの「Radio K.A.O.S.」も冒頭はテクノっぽいリズムで始まったが、当時はこういうリズムがいかにシーンを席捲していたかがよく分かる気もする。ただし、曲そのものはどちらかといえば牧歌サイケみたいな雰囲気で、このリズムとシンセ・オーケストレーションでモダンな味付けをしたのは、おそらくアン・ダッドリー(アート・オブ・ノイズ)だろう。

02. Murder
 序盤はフォーク風なアコースティックな趣き。基本的にフロイドの音楽というのは、こういう曲に思わせぶりな浮遊感だの、正体不明な重厚さだので飾り付けたようなものだったんだろうな…などど思いながら聴いていると、中間部以降では本当にそういう展開になってしまう(笑)。これで鄙びたオルガンがシンセに変われば、おそらくこのサウンドは再結成フロイドの音(「戦争の犬」あたりか)にかなり近くなりそうだ。

03. Love On The Air
 これまでのギルモアにはあまり見られなかったポップで明るい作品。こういうほのかな希望を感じさせるようなタイプ曲は、フロイドというバンドの性格上、これまでほとんど無縁だったが、本作以降の再結成フロイドなどでもちらほら見せるようになる。コーラスの部分などもギルモアの趣味がよく出ている。

04. Blue Light
 ギターのリフにファンキーなブラス・セクションが絡み、フュージョン風なシンコペ・リズムと、もろに84年という時代を反映した作品で、ギルモアがこういうリズムを使うのはけっこう驚きだが、単に日和ってるだけではなく、ギターのリフはクリムゾンの「ディシプリン」も思い出させたりもして、けっこうおもしろい。後半で聴けるオルガン・ソロはジョン・ロードだろう。

05. Out Of The Blue
 これも3曲目の「Love On The Air」と同様、フロイド解散後のギルモアらしさが出た作品。壮麗なオーケストラ・サウンドとアコピでもってナチュラルなサウンドを作りつつ、ギルモアがストレートに歌い、全体としては曙光を思わせる希望感がある音楽になっている。これもまた、再結成フロイドにかなり近いサウンドになっている。

06. All Lovers Are Deranged
 こちらは旧B面1曲目となるのだろうか。気分が変わって、かなりストレートにロックした作品になっている。本作では全体に「ギルモアの新機軸」が目立つが、この曲は前作に共通するオーソドックスなロック・ナンバーになっている。ギターワークもけっこうワイルドで、ポール・マッカートニーの「Run Devil Run」でのプレイを思い起こさずにはいられない。

07. You Know Im Right
 ミディアム・テンポでいささかブルージーに進む作品。この曲ではエズリンのプロデュースがやや過剰だったのか、はたまた「ウォール」的な大仰なサウンドを狙ったのか、よくわからところもあるが、どうも様々な音楽的要素がいたずらに交錯しすぎてしまい、おそらく狙ったハズたったポップさが、どこか空転気味な気がしてしまう。大仰さがおもしろい曲ではあるのだが。

08. Cruise
 こちらはビートルズ風というかポールっぽいテイストを感じさせる、トラッド風味なかなり珍しいタッチの作品。前作ではオーバー・プロデュース気味だったエズリンだが、この曲では彼の巧みな交通整理が効を呈して、ある種の軽みを帯びたポップさがとても気持ち良い音楽になっている(後半のレゲエ風なところなど)。もっとも、フロイド的なギルモアからかなり離れてしまってもいるのだが。

09. Let's Get Metaphysical
 重厚なオーケストラ(アン・ダッドリーが編曲したのだろうか)にギルモアらしい泣きのギターが絡んで進む雄大なインスト作品で、まるで映画音楽のような雰囲気もある。このやや暗鬱さを感じさせるギターは、雰囲気的には再結成フロイドそのものである。

10. Near The End
 6分近い、本アルバムでも最長な曲である。ベースとなっているのは、やや暗目のアイリッシュ・トラッド風な曲だが、それに重くのしかかるような雰囲気やスペイシーな空間を加味して、全体としてはややトリッキーなサウンドに乗せて歌った曲になっている。また後半のギター・ソロへの段取りなど、再結成フロイド的そのものといった曲になっている。

という訳で、前作がフロイド以前のギルモアの音楽をベースにしつつ、それまでの活動の総決算みたいな作品だったとすると、こちらは確実に「フロイド以降のギルモア」を目指した作品といっていいだろう。このままソロ活動をやっていたら、どんな風に彼の音楽が展開したのか、けっこう興味深いところだが、3年後にはフロイドを再結成し、本作を叩き台にした「鬱」を作るのは周知のとおりである。

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nice post. thanks.

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