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2010年4月25日 (日)

CAPABILITY BROWN / Voice

Capabilitybrown

 これ20年振りくらいに聴くんじゃないのかな。キャパビリティ・ブラウンは、私くらい世代のプログレファンにはなかなか忘れられないバンドである。それともいうのも、このアルバムは日本で発売された1977年といえば、ELP、ピンク・フロイド、イエス、キング・クリムゾンといったメジャーなプログレ・バンド以外のアルバムが大量に紹介されていた時期であり、このアルバムもフォノグラムから出たプロフェッショナル・コレクションの第一弾として発売されたように記憶している。
 記憶によれば、これと同時に発売されたアルバムは、ベガーズ・オペラの「宇宙の探訪者」やオルメの「フェローナとソローナ」、そして「ジェネシス・ライブ」といったものだったはずで、今から考えてもかなり渋い選定である(当時のジェネシスはそれほどメジャーではなかった)。まぁ、ジェネシスやオルメはともかとしても、ベガーズ・オペラとこのキャパビリティ・ブラウンについては、そのバンド名すら初めて聞くという全くの無名なバンドであった。しかも内容はガチなプログレというよりは、B級なブリティッシュ・ロックに分類されるべきアルバムだったのである。

 それでも、ベガーズ・オペラの「宇宙の探訪者」はまだ「マッカーサー・パーク」というとんでもないプログレ名曲をフィーチャーしていたからまだ良かったが、このキャパビリティ・ブラウンは、基本的にトリプル・ギター、ベース、ドラムス、ボーカルという6人編成でメンバーに多数はボーカル兼任という、一瞬フォーク系と思わせるコーラス・バンドであり、プログレというにはあまりに家内手工業的、フォークやトラッドというにはコーラスがやたらとテクニカル過ぎる、なおかつオーソドックスなロック・バンドというにはあまりに手が込んでいるという、分類好きにとっては落としどころがないボーダレスな音楽を展開していたのだ。
 それでもA面の4曲はまだオーソドックスであった。1曲目はアフィニティの同名アルバムから、そして3曲目の「Midnight Cruiser」は意外にもスティーリーダンのデビュー・アルバムのカバーであり、前者はオリジナルより「軽く」アレンジし、後者は逆に「重厚に」アレンジしているが、いずれも分厚いコーラスをフィーチャーした比較的スタンダードなブリティッシュ・ロックであり、2曲目はテンポの良いフォーク・ロック風、4曲目は典型的なブリティッシュ・ハードといった感じバラエティは感じさせるものの、同様な趣きを感じさせる音楽であった。

 ところが、様相が一変するのがB面の組曲なのである。キャパビリティ・ブラウンは専用のキーボード奏者がいないバンドのようだったが、冒頭からシンセ、チェンバロ、ピアノによるクラシカルでシンフォニックなムードで堂々の序奏部をつくり、次第に楽器を厚くしながらそのピークでギターが哀愁の旋律を泣きまくるという、もうプログレとしかいいようがない展開になるのだ。この第一部が一段落すると、今度は分厚くテクニカルなコーラスがアカペラが展開されると、リズムが加わりオーソドックスなフォーク・ロック風な音楽となるが、途中にトラッドなどに寄り道しつつ、流れるように展開していく構成はジェネシスの「サパーズレディ」を思わせる巧緻さがあり、まさにプログレ的醍醐味を味わせる。
 中盤はいったん静まり、やはりコーラスをフィーチャーしつつ、ファンタスティックな音楽な展開していくが、途中、メロトロンの大洪水!を挟んで、フォーク・ロック的なオーソドックスなスタイルでしばらく進み盛り上がると、再び一転してハードなスタイルにチェンジ、途中、ジャジーなムードなどにも色目を使いつつ、ドラマチックなハイライトを形成し、やがて冒頭のテーマが回帰していく。素晴らしい構成力としかいいようがない

 そんな訳で、このアルバムB面の異様なまでのプログレ風味は一体なんだったのだろうか。おそらくこのバンドはいわゆるプログレ・バンドではなかっただろう。1973年という時代の趨勢からして、器用なバンドがたまたま当時のトレンドだったプログレ風なスタイルに挑戦しただけ....といった見方も出来ると思うが、それにしてはこの組曲を聴いていると、GG、マイク・オールドフィールド、ジェネシス、M&Gといったバンドが走馬燈のように頭をよぎったりして、そのコアっぷりはちと出来過ぎなような気がする。
 ともあれ、当時これを聴いてやけに興奮した私は、イギリスには未だこんな凄いアルバムが、きっと沢山埋もれているのだろうと、金の鉱脈でも見つけたような気分になったものだった。もう30年以上も前の話である。

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