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2010年3月 8日 (月)

SYNERGY / Sequencer

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 アメリカのシンセサイザー奏者ラリー・ファーストによるひとり多重シンセ・オーケストラ、シナジーの第2作である。前作の「10番街の殺人」については、かなり酷評気味に書いてしまった私であるが、この第2作は中々良い出来だと思う。多少、手前勝手な言い方になると思うが、本作がかくも素晴らしき仕上がりとなったのは、やはり前作と本作の間に、彼が関わったネクターの大傑作「リサイクルド」の存在が大きいのではないかと思う。疑似管弦楽というシミュレーション作業にやや手足を絡め取られてしまった感のある前作に比べ、本作ではシンセサイザーのスペイシーな音色、いささか下世話なドラマチックさや仕掛けをもっと自由に駆使して、よりダイナミックな音楽に仕立てているのだが、そこにどうしても「リサイクルド」の音楽が見え隠れしてしまうのだ。実際、ここで展開される音楽を聴いていると、まるで「リサイクルド」の音楽から、ネクターの演奏したパートだけをカットしたような音楽に聴こえる....ところすらあるくらいなのだ。

 例えば、1曲目の「S-scape」など、金管を模したようなモチーフに乗って、スペイシーで桃源郷風なサウンドがキラキラと輝くあたりの組み立て方は、「リサイクルド」の「Recycle」あたりと全く同じであるし、様々なテーマをつるべ打ちのように繰り出していくあたりアレンジももかなり酷似したものを感じたりするのだ。また「Cybersports」のテクノ的ともいえるエレクトリック感覚など、かのアルバムの「Automation Horrorscope」を思い起こさずにはいられないものがある。
 更にいえば、アルバム中、もっとも大作である11分半にも及ぶ「Sequence 14」では、同じく「Sao Paulo Sunrise」の流動感を思わせる華麗なるサウンドに始まり、やはり「Automation Horrorscope」を思わせるテクノ感覚や「Marvellious Moses 」風な早回し的なダイナミズムなどを織り込んだ、「リサイクルド」と共通する聴き応えが仕上がりになっている。こういう部分はまだまだあるが、いずれにしても、本作ではこうした「リサイクルド」でラリー・ファースト自らが使った方法を、逆輸入して自分のソロとして展開しているような部分が実に多いのである。で、結局はそうした部分こそが、前作と本作との音楽的クウォリティの差となって現れたということなのだろうと思う。

 思うに、ラリー・ファーストはネクターとの作業で、「既に出来上がったバンドアンサンブルの音楽」にいかに効果的なシンセ・サウンドを付加していくかという作業でもって、シンセサイザーという飛び道具を、音楽的に使うやり方というものを会得したのではないだろうか。それらをフィードバックした上でこの作品は作られ、果たして前作を上回る仕上がりとなったという訳だ。もちろん、相変わらず効果音だけを振り回しているだけで、肝心の音楽が不在になってしまっているところも散見するが、前作に比べれば、遙かに音楽的であり、ロック的なスリリングさが感じられるのも特筆すべき点であろう。
 ちなみに前作の「10番街の殺人」に相当する、既成曲のアレンジとしてはドボルザークの「新世界」から例の有名な第2楽章を取り上げている。冨田風にスタティックなアレンジではあるが、この楽章のコラール的なところをファンタスティックに拡大したなかなかのアレンジだ。また、「クラシカル・ガス」は前作にも収録された作品だが、そのメリハリといい、リズミカルなアレンジといい、前作のそれを軽く上回るまずはシナジーの代表作ともいえる仕上がりとなっている。

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