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2010年3月30日 (火)

RODGER WATERS / Radio K.A.O.S.

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 「ヒッチハイクの賛否両論」から3年後の1986年に発表されたロジャー・ウォーターズの実質的なソロ第2作。同じ頃、再結成フロイド「鬱」が発表されていることから、2つに分かれたフロイドの両陣営が結果的に激突することに作品としても記憶されている。私はこの作品を今回ほとんど初めて聴くはずだが、ジャケットにせよ、ラジオ局を舞台にしたコンセプト・アルバムという内容にしろ、当時の記憶がけっこう残っているから、こちらの作品もそれなり話題になったのであろう。ただし、セールスという点では再結成フロイドの圧勝に終わったことを周知の通りである。前作に比べればかなりポップな仕上がりであり、内容的にはも充実しているから、セールス面でもう少し健闘しても良かったような気もするが、やはりフロイドというブランドには敵わなかったというところか。それでは例によって、先日ツイートした内容を元に収録曲をメモっていきたい。

1.Radio Waves
 本作はラジオ局が舞台になったコンセプト・アルバムということで、曲間にはDJらしきSEが挿入されているが、前作のような曲のテーマが循環したり、途中で再現したということはあまりなく、それぞれの曲の独立性がかなり高いのが特徴だ。冒頭のこの曲は前作の反省がありありと伺える、あまりに軽快でダンサンブル、コーラスなどまるでバグルスを思わせるポップな仕上がりになっている。もっとも、重層的なサウンド構築の執拗さは明らかにフロイド譲りだが。

2.Who Needs Information
 基本的には前作ラインのアーシーな感覚をベースに、叫ぶウォーターズのボーカルにコーラスが応酬するかなりブルース・ロック的なムードが強い作品。ただし、バックにメル・コリンズにサックスが聴こえたり、バスドラムとベースのユニゾン・リズムが曲のテンション高めたりと、前作よりぐっとタイトな仕上がりになっている。後半のバックで聴こえるストリングスやブラス隊の立体感はさすがの音響感覚だ。

3.Me or Him
 私のような人間が聴くと、この曲は70年代初頭のフロイドがよくやった不思議系というか、フォーク風な小品(「原子心母」のB面や「おせっかい」のA面)をモダンにリファインしたようなものに感じる(この独特なコード進行は懐かしさを感じるほど)。もっとも、打ち込みリズムとアコギに絡むリフとか、今聴くと多少古びてしまったが、フェアライトの尺八サウンドなどを乗せて、最新モードの音楽にはなっているのだが。

4.T.he Powers That Be
これは「ウォール」あたりのフロイド・サウンドと当時の流行のサウンドを無理なくドッキングさせた曲といっていいかもしれない。愛好のドラムとベースのユニゾン、シーケンサーを取り入れたファンキーなリズム、シンセのキラ物、ポップなコーラス、ココ一発ギター(アンディ・フェザー・ロウ?)など、サウンド・プロダクション的にみれば、当時これはほぼ完璧な仕上がりだっただろうと思う。

5.Sunset Strip
これも前作ラインのブルージーな作品だが、やはりかなりポップな仕上がりになっている。ミドルからの転調がいかにもいかにもな雰囲気を演出して、ウォーターズの余裕を感じさせる。しかし、一見ノンシャランなこのサウンドだが、子細に聴くと実に過剰な作り込みがなされていて、各種ギターのリフ、シンセ、ブラス、コーラスをオブジェのように組み合わせて作り上げたアンサンブルの構成は複雑を極めている。

6.Home
全曲からメドレーで続く、本作中もっとも都会的でダンサンブルなナンバー。ウォーターズがいつものようにドラマチックにアジり、音楽のテンションも高まっていく。このアルバムの物語はさっばりわからないが、曲のポジション、切迫感の高まった曲調からいっても、物語はこあたりが山場になっているのだろう。女性のスキャットボーカルと高揚するギターを交えた後半の盛り上がりはさすがの一言という他はない。なお、ウォーターズはベーシストだけあって、こういうダンサンブルなリズムでも、「今の時代リズムはこうすればいいんだろ」みたいな、これで12インチシングルを切れそうな、実に気持ち良いグルーブ感を作っているのはニヤリとさせられる。

7.Four Minutes
 時計のイントロ、「虚空のスキャット」の80年代版みたいなイントロ、そして大スケールのゴスペル的コーラス、そしてエレクトリックなスペースへとどんどんスケールが広がっていく壮大なサウンドで綴られるこの曲は、までるロケットで地球を飛び出して行く瞬間を描写したような展開になっている。乱舞するSEも効果的で、本アルバムのハイライトのひとつといっても曲だ。

8.The Tide Is Turning
前曲からカットインして始まることの曲は、おそらく前作と同じくカオスから安寧な日常生活へ回帰した、安堵感のようなものを表現しているのだろう。後半のゴスペル風な盛り上がりなど、前作とおなじやり口とはいえ、なかなか感動的な曲だ。サウンド的にはガムラン風なシーケンスにキラキラしたシンセが絡むあたりが、実に巧緻なサウンドを形成している。

 という訳で、先日、初めて聴いた時、実はこのアルバム全くピンとこなかったが、何度か繰り返し聴いた後、こうして改めてじっくり聴いてみたところ、なかなかの....いや、傑作といってもいい作品であることを痛感した。前作ではドラマの推移も、そのハイライトもわかりにくいきらいがあったが、こちらは歌詞などわからくても、十分に音楽的感興が伝わる作品になっているのも、また素晴らしいところだ。

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