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2010年3月12日 (金)

THIJS van LEER / Reflections

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 フォーカスのリーダー、タイス・ファン・レアーは70年代前半フォーカスの全盛期の頃からソロ活動をしている。彼は自らのことをキーボード奏者ではなく、フルート奏者として自認していることは間違いなく、彼が出した一連のソロ・アルバムは、おそらくその過半数はオーケストラをバックに彼のフルートをフィーチャーしたセミ・クラシックといいたいような音楽である。その一番最初のものは「Introspection」という作品で、1972年にCBSから発表されているが、なんと日本でも「イマージュ」というタイトルがつけられて発売されていた。時にフォーカス全盛期、フォーカスに関連するものは、きっとなんでも売れたのだろう、中世音楽を全面に押し出したヤン・アッカーマンの「流浪の神殿」やタイスの「Introspection」が、当時立派に国内盤として流通していたというのは、今や隔世の感もある。
 当時、私はフォーカスにかなり入れ込んでいたせいで、前述の2枚はどちらも勇んで購入したクチだが、中世音楽に紛れてロック風な曲が多少は収録されていた「流浪の神殿」に比べ、こちらの「Introspection」は、全体を通じてロックのロの字ない、全くのクラシック然としたたたずまいには驚愕した。実はクラシックというより、実体としては「クラシック寄りのイージー・リスニング・ミュージック」といったものだったのだが、現在とは違い、音楽ジャンルやカテゴリーがきっちりと存在していたあの頃に、ロックの方からこういう代物が出てくるというのは、それだけでもかなりの驚きがあったものである。

 さて、本作だが、こうして始まったタイス・ファン・レアーのセミ・クラシック・シリーズの1作である。彼のこのシリーズを当初「Introspection」シリーズとして都合パート4まで続け、本作はその後を受けて1981年に発表された作品のようである。私は「Introspection」シリーズですら全て聴いている訳ではないが、かのシリーズが全体としては、「ポール・モーリアより大分高級だが、さりとてクラシックといえるほどシリアスでもない音楽」だったのに比べると、 本作ではロジェ・ファン・オッテルロー(タイスの音楽の師匠で「Introspection」の編曲を担当)が居ないせいか、いささかベタなヨーロッパ調イージー・リスニングに流れてしまった印象が強い。BGMとして聴くならいいけれど、フォーカスのタイスの作品として聴くには、ちと不満を感じてしまう仕上がりだ。
 まぁ、そんな本作であるが、フォーカス・ファンなら無視できない点が実はひとつある。それは本作には「Focus 6」が収録されていることだ。フォーカスは2作目で「Focus 2」、3作目「Focus 3」と、バンド名の後に番号を振った曲を度々収録しているだけれど(現在は「Focus 9」まで来ている)、何故だか「Focus 6」だけはフォーカスの作品にこれまで収録されいなかったのである。おそらく、フォーカスの第6作「Focus con Proby」のために作ってお蔵入りになってしまった曲だったのだろうが、それがオーケストラ・ヴァージョンとはいえ聴けるのだから、これはやはり注目せざるを得ないだろう。

 問題の「Focus 6」を聴いてみよう。曲の序盤はまずピアノのストリングスのさざ波にのようなイントロにのってフルートが登場する。これは「Focus 2」に似た感じの旋律だが、曙光のようなヨーロッパ調の明るさは、むしろシリーズ最初の「Focus」を思わせるものも感じられたりする。また、あまりドラマチックな山場は作らず、テーマの繰り返しで、ゆったりと曲を盛り上げていくあたりのアレンジは「Focus 4」のセンスにも近い。まさに正調フォーカス・ナンバリング・シリーズといった仕上がりだ。逆にいえばこういう曲であったからこそ、あのジャズとポップス風味が妙に混濁した「Focus con Proby」には、バランス的に入れられなかったのだろう。
 あと、6曲目は「ハンバーガー・コンチェルト」に収録された「ストラスブルグの聖堂」のオーケストラ・ヴァージョンで、これも聴いていて損はない出来だ。ついでに、ヴァンゲリスの「チャイナ」、プロコルハルムの「青い影」、10ccの「アイム・ノット・イン・ラブ」といった大名曲を取り上げている点もおもしろい。どれも甘口で、ヨーロッパ大陸で、かの曲をアレンジするとこうなるか的おもしろさがあり、南フランスのお土産屋さんかなにかで、これらがかかっていたらさぞや似合いそうな感じである。個人的には映画「さよならをもう一度」で有名になったブラームスの交響曲第3番の有名な第三楽章が取り上げられていたのがよかったかな....などと、割とネガティブな書き出した割には、聴きどころ満載である(笑)。

※ ちなみに本作はCD化に際して、ラヴェルの「ボレロ」バッハの「カンタータ第82番-われは満ちたれり」の2曲を付加した12曲構成で、「Borelo」というタイトルでリイシューされている。私の聴いたのは当然そちらの方である。


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コメント

どうも過去の自分のアンテナにひっかからなかったと思ったら、そういう毛色のソロだったのか。

こっちはノーチェックだったので、フォーカス6は欠番だとばかり思ってましたよ。

> どうも過去の自分のアンテナにひっかからなかったと思ったら、
> そういう毛色のソロだったのか。

タイスのソロは大半が入手困難なので、オレも全貌は把握してないですが、アメリカのフュージョン・シーンの連中と78年に作った「Nice to have met you」という珍品もあります。プロデュースがトム・スコット、エリック・ゲイル、スティーブ・カーン、マイケル・ブレッカーなんか入っているから、さそがやフュージョンなんだろうと思うと、ほとんど「マザー・フォーカス」か「青い旅路」みたいな世界で、彼のミュージシャン・エゴの強さを伺わせせマス。とはいえ、「おいおい、かのスティーブ・カーンに「ホーカス・ポーカス」弾かせますか!」....みたいな見逃せないシーンもあったりしてwww。

>「おいおい、かのスティーブ・カーンに「ホーカス・ポーカス」弾かせますか!」....

わははは(笑)それあったら、きっと話題作になってたんじゃない?

> わははは(笑)それあったら、きっと話題作になってたんじゃない?

いや、ホントに弾いてるのよ。ひょっとしたらカーンじゃなくエリック・ゲイルかもしれなけれど、なにしろ Eric Gale, Antony Jackson, Harvey Mason, Steve Khan, Ralph MacDonald, Richard Tee, ってメンツで「ホーカス・ポーカス」ぶちましてる。しかも、オリジナルにけっこう忠実。もう笑うしかない珍演です(笑)。

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