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2010年3月10日 (水)

AREA / Tic & Tac

Area_2


 高い人気を誇っていたバンドから、そのイニシアティブをとっていたリーダー格のメンバーが(あるいは看板スターが)、よりによってバンド全盛期ともいえるピーク時に突如脱退するという事件はよくあることである。これはプログレの世界も同じ、ジェネシスからピーター・ゲイブリエルが、イエスからジョン・アンダーソンが、ゴングからデビッド・アレンが、マリリオンからフィッシュが....と、この手の脱退劇は枚挙のいとまがないくらいである。しかも、おもしろいのは、今、思い出つままに名を上げていったバンド達に限らないが、この衝撃的ともいえる人事異動を目の当たりにしつつも、残ったメンバー達はその後バンドを継続させ、意外にもほぼ傑作と呼びうるアルバム(「トリック・オブ・ザ・テイル」「ドラマ」「シャマール」「美しき季節の終焉」)を物にしているということである。

 このアレアの場合事情は多少ことなるが、状況としては似たようなものである。アレアはご存じの通りディメトリオ・ストラトスという超人的なボーカリストを擁して、彼のエジプトで生まれたギリシャ人というルーツから生まれたと思われる、地中海や中近東音楽音楽をベースにした特異なヴィブラート・ボイスに、ジャズをロックを自由に行き交ヴァーサタイルなインストをスパークさせ、破天荒なダイナミズムを獲得した音楽だった。彼らはこうしたスタイルでアルバムを数枚ほど残し、多分その最盛期のまっただ中で、リーダーのディメトリオがなんと白血病で亡くなってしまうのだ。このバンドに対するダメージの壊滅度はほぼ最大級であったろう。ほとんどビートルズからレノン&マッカートニーがいなくなってしまったようなものである。しかし、メンバーはこの悲劇にひるむことなく(実際はひるみまくっただろうが-笑)、このアルバムを作り、それが意外にも傑作となったのだ。

 むろん、ディメトリオが既におらず、それに代わるメンバーも補充せずに作ったため、音楽的にはそれまでのアレアのそれとはかなり異なるものである。バンドメンがおそらくジャズ出身の者ばかりだったこともあるだろう。ここで聴ける音楽はかつてのアレアとは似て非なるジャズ・ロック....いや、フュージョンと呼びたいような代物であるのは間違いない。しかし、このアルバムで聴ける心地よいフュージョンとはいいさか異質なアグレッシブさ、ディメトリオのボーカル・ラインを模したようないくつのモチーフを組み合わせてテーマを作っていくところなど、私には十分にアレア的な匂いが感じれたし、アレアの残像のようなものを抜きにしても、ファンキーなリズム・パターンとベースにしつつも、縦横に4ビートのオーソドックスなソロを配置していく、クレバーとしかいいようがないアレンジのセンス、シンセサイザーの巧緻な使用、マハビシュヌオーケストラに迫るようなリズムセクションのダイナミズムなどは、単品のジャズ・ロックとしても一級品と呼びたいような仕上がりを示していたと思う。

 本作がどうしてこのような仕上がりになったのか、すこし意地の悪い推察をさせもらうと、後期のアレアのアルバムは、どんどん非ジャズ的な音楽に向かっていたことが、ひょっとするヒントになるかもしれない。もともとジャズ・ミュージシャンだったアレアのメンバーにとって、これはかなりしんどいものであったろうことは(嫌がっていた訳では当然ないだろうが)、「1978」や「maledetti」といったアルバムの音楽聴けば、なんとなく察しがつく。で、ディメトリオ亡き後、残ったメンバーがアレア的なアルバムを作るとすれば、それは「1978」のようなものではなく、初期の4作に近いジャズ・ロック的なものになることは当然の成り行きだったのではないか。しかも、メンバーはそういう初期型アレアの音楽スタイルを長らく封印状態だったので、本作では期せずして息せき切ったように、ストレートなジャズ的なスタイルがあふれかえる結果になったとのでは....思ったりするのだが、どうだろうか。

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