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2010年2月27日 (土)

ROGER WATERS / The Pros & Cons Of Hitch Hiking (ヒッチハイクの賛否両論)

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 83年に出た「ファイナル・カット」を最後にフロイドを解散させたロジャー・ウォーターズが、その一年後に出した実質的なソロ第1作である。ロック・オペラ、あるいはコンセプト・アルバム的な音楽フロイドでやり尽くしたから、ソロではもっとリラックスしたものでもやるんだろう....と思っていたら、堂々のコンセプト・アルバム出してきた....というのは、いかにウォーターズらしい、と、当時は感じたものだが(笑)、なんでも本作はフロイド時代に「ウォール」と共にこのアイデアをメンバーに提示したところ、あっさりと却下されたアイデアを元にしているのだそうだ。やはり、ウォーターズとしては「やり尽くしてなどいない」というところだったのだろう。

 で、このアルバムでコンセプトなのだが、私はこれのを訳詞もない輸入盤で聴いているので、何を歌っているのか、何をいいたいのか、実はさっぱりわからない。調べてみると、いささか神経症的な主人公が体験する、夢とまどろみを行き交いつつ、やがて日常に戻って行くまでの心象風景といったところで、それを約50分に渡りリアルタイム(!)で表現しているのが特徴ともなっているようだ。音楽的には特に巨大なドラマがある訳でもなく(クラプトンやサンボーンという人選は凄いが、ご両人ともにウォーターズの締め付けがきつすぎて、音楽的な目玉になっていない)、夢とも現実ともつかないまどろみを、けっこう淡々と表現しているという感が強いが、その割に歌詞にはなにか文学性がありそうだし、構成はやけに入り組んで複雑というのだから、いきおい難解な印象は強まらざるを得ないといったところだ。ただ、こうした複雑なコンセプトは「悪夢から覚める瞬間」という、誰でも体験する状態を置き換えてみると、けっこう分かりやすいのではないとも思う。

 かくいう私も、先日の明け方に、酒気帯び運転で踏み切り突破した上大事故巻き起こして、警察に捕まるみたいな夢をみたことがあったが、ああいう夢から醒めた直後って、「今のは夢だったのか!」と瞬時に我に返るというより、「あれ、今のはなんだったんだ?」、「ん?、夢??」みたいな、しばらくはちっょとした境目のまどろんだような状態がしばらく続くものだと思う。そこから徐々に「そうか、あれは夢だったのか、あぁ、夢でよかったぁ」みたいに日常生活へ戻っていくと思うのだけれど、このアルバムで50分に渡って展開される音楽による心象風景って、結局、そういう「悪夢から安堵感至る瞬間」のようなものを拡大したもんなんじゃないのかなぁ....と思ったりするのだ。それこそ独善的なこじつけかもしれないけれど、そんなものだと思えば、この作品もけっこう身近に感じたりもするのではないか?。まぁ、少なくとも私はそう感じた(そう思えたら、にわかに愛聴盤になったというべきかも....)。

 そんな訳で、本作のハイライトは主人公の精神状態に曙光が差してくるようなラストパート(最後の3曲)である。このアルバムはまさにこのメドレーを聴くためにあるといってよく、この部分ではそこまで語られた気怠い苦悩と重苦しい妄想が、徐々に浄化されるようなう感動があると思う。ただ、問題なのはやはりそこに至る約30分間の音楽だろう。この部分は、聴いていて「なに一人で朝ぱらからそんなに苦悩してんのよ」みたいな、どうも私小説な独善を感じてしまいがちだ。偉そうなことを云わせてもらえば、ここでのウォーターズは嘘でも絵空事でも良いから、もう少しドラマを盛り上げるべきだったと思う。そうすれば、ラストの10分間がもっと生きてきたろうに、と思ったりするのだが。

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