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2010年2月17日 (水)

SYNERGY / Electronic Realizations for Rock Orchestra

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 シナジーはアメリカン・プログレ・バンドの草分け的存在である。まぁ、バンドとはいってもシナジーの実体はキーボード奏者ラリー・ファーストであり、彼のマルチトラック・レコーディングによる「鍵盤による仮想管弦楽」がメインとなった音楽である。ラリー・ファーストといえば、後年のピーター・ゲイブリエルのソロ・アルバムへの参加で、一般的にもけっこうな知名度を得た感もあるが、おそらくシナジー名義で1975年に発表された本作が、事実上のデビュー作となるのだろうと思う。
 記憶によれば、本作は当時の日本でも「10番街の殺人」というタイトルが付けられて、ほぼリアルタイムで発売されていたはずだ。しかも、それがFM(NHKだったと思う)で、アルバムをまるごとオンエアされたこともあって、その頃、高校生だった私はその放送を一生懸命エアチェックしたおかげで、本作に触れることができたというのだから、現在とは隔世の感もある。当時、プログレッシブ・ロックというのは、けっこうアップ・トゥ・デートな音楽だったのだ(笑)。

 さて、本作の内容だが、前述の通りラリー・ファーストによるひとり鍵盤多重オーケストラである。ラリー・ファーストは鍵盤というよりは、シンセという機械にこだわりを持っていたらしく、本作ではピアノやエレクトリック・ピアノ、ハモンド・オルガンといったオーソドックスなキーボードはほとんど使用せず、もっぱらムーグ、アープ、オーベイハイムといった往年のアナログ・シンセとメロトロン(当時、最新鋭中の最新鋭だったデジタル・シーケンサーなども一部使用している、ただしソリーナなどのストリング・シンセは何故か出てこない)をメインに疑似管弦楽を作り出している。
 全体としては、シンセへの執拗にこだわりだとか、いかにもマニアックに作り込みましたといった大作然とした佇まい、アナログ・シンセの懐かしくも重厚な音色のオンパレードなど、鍵盤プログレが喜びそうな要素が満載された出来になっている。それはアルバム冒頭の「Legacy」で、キラキラするアルペジオにのって桃源郷の如きサウンドが展開し、そこにメロトロンの壮大な響きが絡むというオープニングの場面からも明らかであろう。ただし、この作品を一個のプログレ作品として聴いた場合、曲にせよ、サウンドにしても、いまひとつ訴求力に欠けるような気がしないでもない。一種シンセのデモ・ミュージックとして割り切って聴くなら、それはそれでひとつの有り様だと思うのだけれど、どうも音楽的にはちと弱いような気がするのである。

 なにしろ、シンセ・オーケストレーションがいかにも中途半端である。このアルバムの音楽を聴いていると、確かにサウンド自体は重厚だし、カラフルでもあったりするのだが、、聴いているとすぐに「ベースとドラムが欲しい」と思ってしまうのだ。ベースとドラムがいないため、曲は持続的なリズムと低音に欠け、どうも行き当たりばったりでシンセを振り回しているだけみたいな印象になりがちなのである。そして、収録された曲がどれもイマイチ魅力が乏しいという点も大きい。「10番街の殺人」などの既成曲を除けば、どの曲もちと平板で、クライマックスをどこなのかよくわからないし、アレンジ面でも、前述の疑似管弦楽の半端さに加え、振幅や緩急といったメリハリがどうも感じられない点が散見するのだ。まぁ、ひょっとすると、ここでは意図的に印象派風な茫洋としたサウンドを狙っているのかもしれないが....。
 そんな訳で、本作品、しばらく前にCD化されたのを知り、現在の耳で聴けばまた違った印象もあるかと思って、勇んで購入はしてみたものの、残念ながら、今聴いても基本的なところはほとんど変化はなかった。やはりラリー・ファーストといえば、ネクターが残したプログレ史に残る傑作「リサイクルド」で聴けた、シンフォニックでカラフル、ファンタスティックでドリーミーなあのシンセ・サウンドにトドメをさすのだろうか?。

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コメント

>当時、プログレはアップ・トゥ・デートな音楽だったのだ(笑)。

朝、夕、夜とプログレ系のアルバムを丸ごと1枚紹介する番組がNHKにありましたよね。当時の高校生には、レコード1枚の値段って充分に高価だったので貴重な音源でした。

しかも、新譜を紹介してくれる場合が多くて、特に気に入ったのはレコードで買い直していた。

マンダラバンドもスティーブ・ハケットの最初のソロもそういうパターンでした。クリムゾンのUSAなんかもそうか。

> 新譜を紹介してくれる場合が多くて、特に気に入ったのはレコードで買い直していた。

オレの場合、つれづれに思い出してみると、FMでほぼ全曲オンエアされて購入したアルバムというと、一番最初はフロイドの「狂気」で、これは確かFM東京(違ったかな)、あとは例のNHKで、シンフォニック・スラムの1枚目、トリアンヴィラートの「スパルタカス」、ルネッサンスの「シエラザード」、マイク・オールドフィールド「オマドーン」、そしてコレといったとこっすかね。全て75年っていうのが、プログレ全盛期を物語ってますよね~。ナンデさんのマンダラバンドもスティーブ・ハケットの1stも75年だし(笑)。

今思えば、1975~1976年というのはプログレ爛熟期だったのだなあ。PFMの新譜とかが、各メディアで大々的に取り上げられてましたもんね。日本のプログレ系ミュージシャンがボチボチ出てきたのもこの時期じゃなかったかなあ。

> 今思えば、1975~1976年というのはプログレ爛熟期だったのだなあ。
1972年と1975年のふたつの年がプログレの2大ピークというのが、私の昔から考え....ってのはもういろんなとこ書いてますけど(笑)。

> 日本のプログレ系ミュージシャンがボチボチ出てきたのもこの時期
あの頃はタイムラグあったから、四人囃子とかメジャーで出てきた頃は、すでにムーブメントとしてのプログレは衰退期入っていて、アインソフとかになるとほぼ完全にマニアックな存在として登場しましたからねぃ。

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