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2010年2月12日 (金)

PINK FLOYD / Is There Anybody out There? -The Wall Live 80-81-

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 「ウォール」というアルバムは、昔から私の鬼門である。先日も書いたけれど、ピンク・フロイドというと、私は「原子心母」で開眼し、主に「ウマグマ」から「狂気」までの幻想的路線のサウンドに耽溺していたせいで、「炎」はまだ良いとしても、リアリズム路線が顕著になった「アニマルズ」、そして濃厚なアジテーションが横溢した「ウォール」に至っては、ピンク・フロイドというバンド名こそ同じだけれど、もはや別のバンドになってしまったように感じてしまい、私の音楽的興味の範疇から離れてしまったのだ(同じ頃、クラシックやジャズの方に音楽的関心がシフトしてしまっていたことも大きいのだが)。
 とはいえ、「ウォール」はご存じのように記録的なヒット作ではあったし、音楽的評価も非常に高いものがあったので、「従来型のフロイドの延長として聴くと違和感も大きいが、きっと音楽単体として聴けば優れたものに違いないだろう」という思いも捨てがたくあり、ここ四半世紀、たまに思い出しては聴いてみたりはしていた。しかし、ダメなのである。せいぜい「ある種のロック・オペラとしてはきっと優れているんだろうな」みたいな冷淡な感想しか思いつかず(笑)、この音楽について好きになるというところには到底行かなかったのである。

 さて、本作は「ウォール」発表後、20年以上して発売された「ウォール」発表直後に敢行されたツアーでのライブである。収録曲は「ウォール」の全曲、それにスタジオ版では削除されたとかいう2曲が復元演奏されており、その意味スタジオ盤の「ウォール」より、むしろ作品の全貌を伝えているのはこちらの方という人もいるくらいの作品である(「ウォール」以外のナンバーは一切収録されていないという、潔い編集も逆にそうした点を浮き立たせている)。私が今回これを購入したのは、本作がそうした意味で「ウォール」のアナザー・ヴァージョンであるということが大きい。スタジオ盤の「ウォール」を今更聴いても、ネガティブな印象は変えられそうもないが(笑)、ライブ盤ならまた違った側面が見えてくるかも....という訳だ。
 で、実際聴いた印象としては、予想に反して中々いい。スタジオ盤の「ウォール」はいささかボブ・エズリンが全体を仕切りすぎたのか、アルバムを構成する曲がそれぞれポップになった反面、やや小振りで大人しめな音楽に終始しまっていたようなところが否めいが、こちらはライブだけあって、みなぎる緊張感といい、その緊張感が停滞しない一貫した流れといい、この大作にこめられたであろう「閉塞状況においこまれた、主人公の自我の葛藤」みたな部分をけっこうリアルに伝えていると思った。お馴染み「Another Brick In The Wall」が三カ所に配置した前半のバランスなど、スタジオ盤だとなんだかとりすました他人事みたいに感じた訳だけれど、こちらはドラマを動かす主要テーマとして、きっちりとその役割を認識できるといったところだろうか。

 あと、今さら気がついたことを書いておくと、ピンク・フロイドってこの時期から既にサポート・メンバーを付けてかなり分厚いサウンドを展開していたということ。サポートを付けてライブをするのは、てっきりギルモアが主導してからだと思っていたので少々意外だった。あと、この時期のフロイドだから、こうなるのは致し方ないところだが、いわゆるフロイド的なサウンドという点で、ここに参加したサポート・メンバーはおそらくフロイド的音楽に全く慮っていないというか、けっこう普通のスタジオ・ミュージシャンのあっけらかんと音を出しているのは、やはり「ウォール」ゆえということになるんだろうか。ウォーターズも凄い気合いでアジってることだし....。
 という訳で、このライブ盤、けっこう気に入ったので、iPodに入れてしばらく聴き込んでみることとしたい、かなりイケそうな予感がする(うれしい)。実をいうと、これと一緒にウォーターズの「ヒッチハイクの賛否両論」と「レディオ・ケイオス」も購入してきたので、これが気に入ったら、「ウォール」同様、これまで鬼門中の鬼門だったこれらの作品にも再挑戦することとしてみようと思う。あっ、でも、その前に「ファイナル・カット」があったけか。

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コメント

「The Wall」は当時、かなり気に入って聴いていたんだけど、他のプログレバンドがポップな方面へシフトするのが目立つ中、ニュー・ウェイブの荒波吹きすさぶ中を、よくぞ真っ正面から立ち向かっていった!みたいな感じで聴いていた気がする。

ベルリンの壁崩壊時に、ロジャー・ウォータスがミュージシャンかき集めて、ベルリンでやったコンサートの実況版もあるけど、その時に初めて聴いた、ブライアン・アダムスが唄う「ヤング・ラスト」(アルバム未収録)がえらく格好良かった。

ああ、肝心の本アルバムについて全然触れてねえ…

アルバム未収録曲でブライアン・アダムスが唄ってたのは"What Shall We Do Now?"でした。あと、ウォールはアルバム制作時に既に、スタジオ・ミュージシャンに演奏させてた部分がけっこうあったという話を思い出した。

> ベルリンの壁崩壊時に、ロジャー・ウォータスがミュージシャンかき集めて、
> ベルリンでやったコンサートの実況版もあるけど
ああ、それもありましたね。そっちの方メンツの豪華さは◎として、演奏そのものテンションとかどうなんです?。さすがにウォーターズのことだから、単にお祭り騒ぎに終始してる訳じゃないだろうけど....。

> スタジオ・ミュージシャンに演奏させてた部分がけっこうあった
> という話を思い出した。
スタジオ盤からそうだったのかい(笑)。でも、このライブもミュージカル・ディレクターとしてギルモアがクレジットされていたから、全くもってウォーターズが独裁的に音楽を仕切っていた訳でもないのだろうけど、やはり、「ウォール」の時点でバンドとしての陣容はけっこう溶解しつつあった....ということなんですかねぃ。

ウォーターズの方も予想外といっちゃなんだけど、単なる豪華ゲストの寄り集まりとは思えないテンションの高さです。豪華ゲストたてるために、ソロパートなどが増えていて、そういう面白さもアリ。

こっちの方でもスノーウィー・ホワイトがギターを弾いていて、この人のギルモアのコピーはコピーの領域超えてる!と思います。

> 単なる豪華ゲストの寄り集まりとは思えないテンションの高さです
ふむふむ、やっぱこっちも買う価値ありそうですねぃ。元々オペラ的な佇まいがある作品ゆえ、その意味では、フーの「トミー」もそういうありましたけど、曲毎にヴォーカルを変えるというのは、作品本来の広がりを体感させてくれるかもしれませんね。

> こっちの方でもスノーウィー・ホワイトがギターを弾いていて
スノーウィー・ホワイト....ウォーターズのソロ・アルバムでも弾いているのかな。彼のソロ・アルバムだと、クラプトンとかベックがギルモア役をやるという、ある意味豪華すぎるピンチヒッターのせいで、全く眼中になかった人ですが、改めて注目しときます。

スノーウィー・ホワイトが、それこそ、スタジオ盤の「ザ・ウォール」で一部ギター弾いているというウワサあったんじゃなかったかな??

> スノーウィー・ホワイトが、それこそ、スタジオ盤の「ザ・ウォール」で
> 一部ギター弾いているというウワサあったんじゃなかったかな??

うほほ、「ウォール」の制作って、もうほとんどロクシーの「アヴァロン」みたいなもんで、バンド内の陣容が事実上溶解して、実体としてはほとんどソロ・アルバム的な制作プロセスをとっていたんですねぃ。まぁ、そんなもんだったんだろうなぁ。

>もうほとんどロクシーの「アヴァロン」みたいなもんで

次作のファイナル・カット程ではないにしろ、かなりそれに近いんじゃないかな? キーボードのリチャード・ライトも「ザ・ウォール」制作中に事実上の解雇じゃなかったっけ?

> キーボードのリチャード・ライトも「ザ・ウォール」制作中に
> 事実上の解雇じゃなかったっけ?
これがトラウマになって、「鬱」のジャケにはギルモアとメイソンしかいなかったのか(笑)。かのアルバムは「ギルモアが音楽そのもの」ではあったにせよ、ニック・メイスンに比べれば、リチャード・ライトの方がまだ貢献してたのになぁ。

確か、レコーディング中に解雇されて、ツアーの際は「雇われた一人のミュージシャン」として同行したはず。正式にリチャード・ライトが戻ったのって何時なんだろ?

…というのも、「鬱」制作以前の裁判沙汰ではリチャード・ライトの名前が見えないんだよ~。

> 正式にリチャード・ライトが戻ったのって何時なんだろ?

「対」ではきっちり正式メンバーになってますよね。ちゃんと曲も書いているし、そこでお懐かしや....リード・ヴォーカルも披露している。「オレはバンドには戻らないよ、もう束縛されたくねーし、いざこざはまっぴらだし!」とかいいつつ、ツアーのゲスト参加という名目で懐柔されて、なし崩し的に「対」に正式メンバーみたいな感じ?。

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