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2010年2月20日 (土)

NEKTAR / Recycled

Nektar_recycled


 今を去る十数年前、ネットの代名詞がまだパソコン通信だった頃、私は常駐していたNifty Serve内の某プログレ専門の会議室で、「プログレ暴走機関車」という言葉を使ったことがある。この語感でだいたいわかる人もいるかと思うが、これは何かというと、いきなりドッカーンと始まり、次々に曲をつるべうちにしつつ、ハイ・テンション演奏がアルバムの終局まで途切れなくようなアルバム(もしくは片面を使った組曲も含む)のことで、具体的にいえば、トリアンヴィラートの「スパルタカス」、パトリック・モラツの「i」、マンダラバンドの「曼荼羅組曲(片面)」、キャナリオスの「四季」といったものを指していた。このさしずめ映画でいうなら「ジェットコースタームービー」みたいなプログレを私は異常に偏愛していて、この種の話題をそこで度々話題にしたものだけれど、このネクターの「リサイクルド」こそは、「プログレ暴走機関車」の代名詞たる作品として、飽きずに語り続けた作品なのであった。

 ネクターはドイツで活躍した英国産のプログレ・バンドではあるが、どちらかともいわずとも当時は二流バンドであり、72年のデビュー以来、コンスタントにアルバムはリリースしていたものの、聴かれるサウンドといったら、ハードロック的なギターサウンドをベースに、プログレ的なセンスとブルース・ロック的な泥臭さが奇妙な具合に混ざり合った(というか混濁していたというべきか)ようなものばかりであった。テクニックも作曲能力もそこそこあるが、例えばイエスあたりと比べると、どこか突き抜けたところがないバンドといったイメージも強かったと思う。この「リサイクルド」は、そのネクターがなんの音楽的前触れもなく、1975年に突如変身して作り上げたプログレの金字塔的なアルバムである。

 アルバムはティンパニのドロドロ、ギターのカッティングとスペイシーなシンセに彩られシンフォニックなイントロをスタートに、ヘビーなギターのリフとハイ・トーンなボーカル交錯するイエス風な「Recycle」から始まる。既にこの時点で物凄いテンションである。続く「Cybernetic Consumption」はテクノ風なシーケンサー、シンセ・パーカッション、ハードロック風なギターのリフ、冒頭の主題がつるべ打ちのように襲いかかって来る。そのまま続く「Recycle Countdown」は「Recycle」のボーカル主題が回帰、更に「Automation Horrorscope」はヴォコーダー、ボーカル、ギター・リフ、そしてA面後半のテーマを予告と、再びふんだんに音楽的素材を繰り出し、まさにジェットコースタームービー的なテンションで進んで行く。そしてA面最後の「Unendless Imaginations ?」では、前出の「Automation Horrorscope」で予告したテーマをハイライトに朗々と展開しつつ、中間部ではシンセがシンフォニックな白玉で更にムードを盛り上げ、いよいよそのハイライトでウェイクマンの「地底探検」よろしく、大仰な混声合唱団を登場させてしまうのだからたまらない、まさにシンフォニック・プログレの極致といった感じである。

 続くB面も素晴らしい。A面ほどのつるべ打ち感覚はないが、逆にのびのびとした開放感があるのは大きな魅力だ。まず「Sao Paulo Sunrise」だが、これはちょっとトロピカルなリズムの乗って現れるファンキーなギター・カッティングがメチャクチャ格好が良い。あまりプログレ的とはいえないかもしれないが、アルバムのもっとも印象的な部分のひとつとなっていることは確かだ。「Marvellious Moses 」は前2曲のムードを引き継ぎ、いくらかトロピカルなムードを漂わせつつ、サビの部分で見せるコーラスのイエス風な高揚感がなんといっても印象的。中間部で見せるハード・ドライヴィングなギター・サウンドのテンションも素晴らしく、これと前述のコーラスが交錯する部分は文句なく全曲中のハイライトとなっている。

 という訳で、先日聴いたシナジーの「10番街の殺人」がきっかけになって、ここ2,3日というもの本作を何度も聴いているのだが、やはりこのアルバムは、その高揚感、ドラマチックさ、異様なほどハイなテンション、曲を次々につるべうっていくアレンジ、どれをとっても、私にとって最高の「プログレ暴走機関車」であることを痛感した次第である。
 最後にラリー・ファーストについて書いておきたい。シナジーのところでかなりネガティブなことを書いてしまったけれど、本作での彼はまさに水を得た魚の如き大活躍ぶりで、レギュラーのキーボード奏者タフ・フリーマンを完全に食ってしまっている。このアルバムのシンフォニックなスケール感のかなり部分は、彼によってもたらされたのではないかと思えるほどだ。それは近年出たリマスター盤に収録されたジェフ・エメリックによるラリー・ファーストのシンセが大幅にカットされた(というかラリー・ファーストが後でダビングしたのだろう)、リミックス・ヴァージョンを聴けばそれが分かる。このヴァージョンの「リサイクルド」は、突然変異でもなんでもなく、1974年の「Down to Earth」に続くアルバムとして素直に聴けるのである。

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