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2010年2月 6日 (土)

KING CRIMSON / Lizard(40th Anniversary Series)

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 40周年シリーズの一作、この新装再発シリーズはキング・クリムゾンの諸作から3作が選ばれている訳だけれど、「宮殿」と「レッド」というのは納得できるとして、どうしてそこに「リザード」が入るのか、若干解せない感もなくはない。クリムゾンの「ポセイドン」、「リザード」、「アイランズ」の3作は、ロバート・フリップが「宮殿」以降のクリムゾンを暗中模索していた時期の過渡期な作品群として、その後の作品に比べると若干低めな評価がされているからである。ひょっとすると、フリップは今回のリミックス&リマスターにより、とりわけ評価が低い「リザード」という作品への再評価を促すつもりなのかもしれない。なにしろフリップは「紅伝説」の頃から、「ポセイドン」や「リザード」の収録曲を部分的なソースの差し替えを含んだリミックスをやっていて、どうも従来のミックスに彼自身が納得していていないことがありありと感じられたからだ。

 今回は5.1chのサラウンド・ヴァージョンを聴いてみた(オリジナル・ヴァージョンの方)。まず、「サーカス」では開巻エレピのイントロに続いて幻のように聴こえるゴードン・ハスケルのボーカルが、5chいっぱいに広がる、この広がりだけでもかなり新鮮に聴こえるのだが、驚くのはそれからだ。やがてボーカルのエコーが次第に絞られてデッドになるにつれ、ボーカルの定位がセンター・スピーカーにきれいに収束していくオーディオ効果には驚いてしまう。「どうだ、すげーだろ」とほくそ笑んでいるフリップの顔が見えるようだ。また、途中聴こえてくるメル・コリンズやフリップのアコギなどは、きっとボーカル扱いなのだろう。ハスケルに準じた形でぴたりとセンターに定位して、その音の粒立ち、鮮度はある意味ショッキングですらある。「インドア・ゲーム」や「ハッピー・ファミリー」では、ムーグ、ギター、サックス、エレピ、タンバリンなどが、極端にあざとくならない程度に5chに振り分けられ、「リザード」特有の迷路のような感覚を倍加している印象だ。あと、「水の精」はch毎への楽器の振り分け、適度な残響の付加で、従来のいささかぼんやりとした感触が、くっきりとした透明感あるものに変わっている。

 旧B面を占める「リザード」組曲は、このヴァージョンでもって、従来のイメージをかなり一新した印象がある。この組曲はマントヴァーニ風(笑)なメロトロン、フリージャズ風な管楽器群、クラシカルなピアノ(オーボエも)といった楽器が入り乱れ、ある種カオスのような様相を呈しており、2chでは響きがどうしても飽和しがちだったものを、ここではフロントの3chに主な要素を振り分け、それらの残響はもっぱらリアに回したのが効を呈しているのだろう。とにかく各楽器の粒立ちが驚くほど鮮明かつ立体的になっていて、この音楽が本来意図していたでろあろう、抒情と破壊、高貴と通俗が騙し絵のように入り乱れるコンセプトがはっきり伝わってくるのだ。このあたりの音楽全体を見通しを良くする意図は「紅伝説」でリミックスがほどこされた「ボレロ」でも感じられたけれど、やはり5.1chという器があってこそ達成されたというとみるべきだろう。「ボレロ」でフリー・ジャズ風な演奏をするジャズ部隊とは別動のクラシカルなオーボエは、わずかに後ろ寄りに定位させて、同じ管楽器でも音楽的役割事に音場も分担させたているあたりさすがという他はない。

 ちなみに、全体を通じてアンディ・マクローチのドラムとハスケルのベースは主に重量感という点でオリジナルの質感からかなりグレートアップしたリアルさがあり、メロトロンの響きも従来の賑々しいものから、かなりナチュラルなものへと変貌している。ギミックとしては、「ルーパート王子」では、ジョン・アンダーソン自身によるバック・コーラスが後ろから聴こえてきたり、遊園地風な「ビッグトップ」はフロントの左チャンルネルにはじまり、センター、右へと移動し、そのままリアの右から左へと、ちょうど音が部屋の中をひとまわりしたところでフェイドアウトする演出になっている、こういうのはファンとしてはなかなか楽しいものがある。
 という訳で、素晴らしいとしかいいようがないサラウンド・ヴァージョンだ。この手のサラウンド化は、プログレの分野ではELPやイエスなどもあったけれど、さすがに当事者自らがリミックスに当たった強みだろう、オリジナル・ヴァージョンを決して裏切らない妥当なセンスがものをいって、他人様の手の入ったサラウンド・ヴァージョンとは比べものにならないほど、納得できる仕上がりになっていると思う。ちなみにディスクにはこれとは違う、ニュー・ステレオ・ミックスも収録されていて、そちらはさらに新鮮な響きが横溢しているが、これについては別の機会に譲りたい。

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コメント

>どうしてそこに「リザード」が入るのか、若干解せない感もなくはない。

同感! 自分としては好きな作品なのだけど、『新世代への啓示』(アナログ時)から続いた、「リザード」と、ケイデンスとカスケイドのボーカルまで差し替えたりというゴードン・ハスケルに対する扱いを考えると、異例だと思います。

今回の共同作業にあたった、ポーキュパイン・トゥリーのスティーヴン・ウィルソンのフェイバリット・アルバムというのもあったのかなぁ?

何はともあれ、ますます5.1chシステムを導入したくなってきました(笑)。

投稿: ナンデ | 2010年2月 6日 (土) 21時12分

> 自分としては好きな作品なのだけど
そうそう、オレもこの作品大好きなんで、別段文句あるわけじゃないんだけど、「リザード」やるなら、「ポセイドン」や「アイランズ」もやってよね....とか思っちゃう。ちなみに5.1なら、「太陽と戦慄」もおもしろくリミックスできそうっすね。

> ゴードン・ハスケルに対する扱い
近年のクリムゾン作品やこうしたリイシューを見ていると、フリップも歳とって寛容になったというか、ある種のこだわりがなくなったのかもとか思わせますね。時間が何度か回って、こうした作品に対する愛情が出てきたのかな。

> ますます5.1chシステムを導入したくなってきました
だから、やめなさいってば(笑)。半端なの入れても、欲求不満になるだけっすよ。ちなみにオレは映画用に5.1組んだけど、音楽観賞用としてはほとんど使ってないっすもん。

プログレ復活待っておりました。
相変わらず衰えておりませんな。
あの懐かしい日々が甦ります。
この調子でこれからも語ってください。
期待してまっせ![爆笑]。

ex隔離室さん、コメントありがとうこざいます。
ニフティのプログレ隔離室でご一緒してた方でしょうか?。うーん、誰のことだかわからん(爆笑)。ともあれ、しばらくこちらでプログレを語りたいと思ってます。ただ、昔のように派手にやるつもりはなく、ココでひっそりとやっていきたいと思ってますので。どうぞ、生ぬるく見守ってくでさいませ。

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