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2010年2月 8日 (月)

PETER BARDENS / Heart To Heart

Bardenshth


 現在、キャメルといえば「アンディ・ラティマーのバンド」という評価が歴史的にも定まっているのが、彼らの黄金時代、つまり70年代中盤頃は、ラティマーをリーダーとするバンドというよりは、演奏面であれ、作曲面であれ、ラティマーとピーター・バーデンスが同等にリーダーシップを握るいわば双頭バンドの形態をとっていた。彼ら自身も確か当時のインタビューで語っていたような記憶があるが、ビートルズでのレノン&マッカートニーのような体制だったのだろう。この時期の彼らが残した「ミラージュ」、「スノーグース」、「ムーンマッドネス」の三作は、ラティマーとバーデンスの個性がある時は拮抗し、またある時は離れがたく結びついて、絶妙なバランスを見せたプログレ史上の傑作である。おそらくこの点にはついては、誰もが認めるところであろう。ところが、この両者の音楽的な均衡は「レイン・ダンセズ」あたりから綻びをきたし、ついに「ブレスレス」では、決定的に崩壊してしまうことになったらしい。結果的にバーデンスはこれ最後にバンドを脱退、その後のキャメルは一貫してラティマーが仕切っていくことになるのは周知のとおりだ。

 さて、本作はそんなピーター・バーデンスがキャメルの脱退直後の79年に発表したソロ・アルバムである。キャメル本体でいえば、「リモート・ロマンス」の頃の作品ということになるが、当時、熱狂的なキャメル・ファンであった私からして、このアルバムはそもそも存在自体を知らなかったのだから(当然、国内発売はなし)、ほとんどプログレ・ファンから黙殺されたのも同然だったように思う。私はこのアルバムを実は数ヶ月前に購入して、今ようやっと聴いているところだが、この内容からして、当時、これを聴いたファンなら黙殺せざるを得なかったのも分かろうものである。なにしろ、アルバム全体が70年代後半の喫茶店なんかで流れていてもいっこうに違和感のない、当時流行のフュージョン的な感触を取り入れた、軽い(本当に軽いのだ)イージー・リスニング調ロックといった音楽なのだ。
 なにしろ冒頭の「ジュリア」からして、あまりといえばあまりに力の抜けたボサノバ風なポップ作品、2曲目の「ドァーイング・ザ・クラブ」はブラスをフィーチャーした意味不明なボードヴィル調、3曲目の「スリップ・ストリーム」でようやく、多少キャメル時代のスペイシーさを思い出したようなシンセ・サウンドを見せるが、これにしたって基本はポップなディスコ・ナンバーである。当時聴いたらほとんど脱力ものだったのではないか。

 もちろん、キャメルとの音楽的関連を探せばいくらでも見つかる。5曲目「ジンクスド」は「ブレスレス」の「ザ・スリーパー」と似ているともいえなくないし、6曲目の「アフター・ダーク」で聴けるオルガンはいやおうなくキャメルを思い出させる。また、7曲目の「スロー・モーション」のテーマは「アースライズ」を、タイトル・トラックでは「レイン・ダンセズ」の抒情が甦ったりする人もいるだろう。ただ、なんていうか、つい何ヶ月前までキャメルに居た人が作った音楽としては、あまりに「緩くぬるい」のである。当時、リアルタイムで聴かなくて良かったとさえ思うくらいだ(笑)。おっと、誤解がないように書いておくと、これは決してネガティブな意味ではない。バーデンスはこれら一連のソロ・プロジェクトを全て失敗した後、90年代に入って、折りからのニュー・エイジ・ブームにのって、「シーン・ワン・アース」等ヒット作を出す訳だけれど、本作はこれらのニュー・エイジ作品の美点を踏まえた上で聴くべき作品であり、この「緩くぬるい音楽」は決して欠点ではなく、キャメルとは切り離して地点で、初めて心地良く響くものだといいたいのである。つまり、本作は早すぎたニュー・エイジ作品なのだ。私は近年そういうバーデンスの音楽をますます好きになりつつあり、本作もそうした意味で、やけに心地よく聴ける作品となっている。

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コメント

このアルバム好きですね-(自分のブログでは書いていないけど)
なんか、ホンワカ感が何とも言えないですね。

くれるぼさん、コメントありがとうございます。

> ホンワカ感が何とも言えないですね
ですねぃ。当時のキャメルからテンションと構築感をまるごと脱色したようなサウンドは、当時聴いたら奈落の底に落ちていきそうですけど(笑)、今聴くとなんともいえない気持ちよさがあります。ディスコ・スタイルの「スリップ・ストリーム」とか最高、フォーカスの「ベートーベンの復讐」もそうだけど、プログレ畑の人がやるディスコ・ミュージックってのはおもしろいのが多くて大好き!。

という訳で、ぼちぼちこちらでも語っていきますので、よろしくお願いします。

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