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2010年2月21日 (日)

GARY BOYLE / The Dancer

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 我が家のオーディオ・システムからアナログ・プレイヤーを排除したのは、いつ頃だったろう。多分、十数年くらいだったと思うが、当時、まるで民族大移動のように過去の旧作がCD化されていた状況からして、自宅にあるLPが全てCD化されるのも、そう遠くない未来でもあるまいと、アナログ・プレイヤーを取り払ってしまったのである。当時、私が所有していたLPは、約1000枚程度で、今から思えばそれほど膨大ともいえない量ではあったものの、やはり私の見通しは甘かったとしかいいようがない。現在、LP時代にもっていたアルバムの大半はCDで買い直すことは出来たとはいえ、未CD化、あるいはCD化されても、当方が買い逃してしまっている作品も少なからずある。

 先日取り上げたサッド・カフェの「哀しき酒場の唄」などもそうだったが、それらと並んで「たまに聴きたくなっても聴くことが出来ないアルバム」の代表格だったのが、このゲイリー・ボイルの「ダンサー」なのであった(ついでにいうと、コックニー・レーベル、ダンカン・マッケイ、アドリアン・ワグナーなど未だCDで聴けない)。しかし、先日、ひょんなきっかけで新古品が発売されていることを知り、即座に購入手続き、さきほど家に到着、めでたくゲットすることが出来たという訳だ。
 さて、そんな実にお久しぶりな「ダンサー」。現在むさぼるように聴いているところだが、おそらく20年振りくらいなはずなのに、全然久しぶりという感じがせず、アルバム冒頭のシンセとギターのユニゾンに始まり、ウェス・モンゴメリー風なアコギでフェイドアウトする「処女航海」まで、アルバムの構成やソロ・パートの展開、サウンドのディテールなど、細部に至るまで実に克明に覚えていているのには、我ながら苦笑いしてしまった。当時、それだけ愛聴していたということなのだろう。

 本作は現在ではブリティッシュ・ジャズ・ロックの名盤という揺るぎない評価があるが、当時は実質的なアイソープの後継作にしては、いささかポップ過ぎるのではないか、日和っているのではないかという批評もあった。1曲目こそブランドX風なダークな陰影があるジャズ・ロック・ナンバーだが、2曲目タイトル・トラックなどファンスキーなディスコ調だし、アコギをフィーチャーした4曲目「ララバイ・フォー」や最後の「処女航海」などは、一瞬、アール・クルーかと思うようなリゾード風なクロスオーパー作品だったりして、全体としてはアイソトープやブランドXのアルバムほどの歯ごたえない....といった印象もあったからである。
 しかし、今聴くとむしろそこがいい。もちろん、サイモン・フィリップスのドラムが死ぬほどかっこよい「アーモンド・バーフィ」やデイブ・マックレーのエレピににんまりする「アップル・クランブル」など、今聴いても全く色あせないスリリングさがあるものの、今聴いて味わい深いのは、むしろ本作のAOR的な口当たりの良さを表に出しつつ、そこに隠し味のように従来のジャズ・ロック的なシリアスさを溶け込ませている点だったりしたのだ。

 1977年といえばロック・シーンはAORの全盛期であり、プログレ畑のミュージシャン達もこぞって「大人のロック」というトレンドと格闘していた時期でもあった。彼はそのあたりをあまりにスマートにこなしてしまったのだと思う。結果的にこの作品は、ジャズ・ロックというよりは、ボーカルこそ入っていないものの、むしろフィル・マンザネラ/801による「リッスン・ナウ」とかサッド・カフェの「殺怒珈琲II」、ケート・ブッシュのデビュー作といった、当時の英国産AORと共通するようなムードが強くなっていて、今聴くとそのあたりが、実に心地よく私に響いたというところだと思う。まぁ、本作がジャズ・ロックなのか英国産AORなのかはともかくとしても、ジャズ・ロック的なシリアスさとAOR的なスムースさが、実にほどよくバランスした名盤であることはだけは間違いない。
 ちなみに本作は日本国内のリマスターのようで、マスターのノイズが大きかったのか、ややノイズ・リダクションが強めで、オリジナルにあった高域の冴えた感じが多少後退しているのは残念だが、全体としては極端に音圧を上げたり、妙なイコライジングで元の質感が変えてしまったりすることがない、素直なリマスターなのには好感がもてる。

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 先日とりあげた「The Dancer」と一緒に購入したもの。ただし、こちらは昔 [続きを読む]

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