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2010年1月29日 (金)

MANDALABAND III / BC-Ancestors

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 音楽資源の枯渇により、過去のそれのリサイクルが進む現在、往年の名バンドの再結成はもはや珍しいものでもなんでもなくなったが、まさか2009年にかのマンダラバンドが再結成してしまうとは、驚きを通り越して唖然としてしまった。なにしろ彼らが残した2枚のアルバムは、セールス的には惨敗だったし、音楽的評価も日本における異常な高さに比べ、世界的にはそれほど高いものではなかったはずだから、この21世紀に、かのバンドの再結成という音楽的機運が高まることなど、到底ないだろうと思っていたからである。ともあれ、どのような経緯だったのはよくわからないものの、構想30年(ということになるのだろうな、きっと-笑)、制作に実に2年をかけたマンダラバンドの新作の登場である。

 マンダラバンドはとりあえずレギュラーバンドの形態で制作された1作目とアラン・パーソンズ・プロジェクトのようなスタイルで感性にこぎ着けた2作目では、メンバーが異なるが、本作では1作目からはアシュレイ・マルフォード(ギター)、2作目からはBJHのウーリー・ウィルステンホルム(キーボード)、スティーブ・ブルームヘッド(ギター)、キム・ターナー(ドラムス)といった面々に加え数人のゲストを迎えたバンドを基本に録音されたようだ。ただし、本作はデビッド・ロールがホーム・レコーディングしたデモ・トラックを生に差し替えていくという作業でもって完成させた痕跡が随所にあり、制作方法としては一作目とも二作目とも違う、今時なスタイルを完成されたともいえる(なので、名称は「マンダラバンドIII」なのか)。

 さて内容であるが、私が密かに期待した第2作「魔石ウェンダーの伝説」の完結編というものではなく(第2作は「to be continued」で終わっていた)、映画「ハムナプトラ」を思わせるジャケットなどからも予想されるようにエジプトや中近東当たりのエキゾシズムをメインした、新たなストーリーなりテーマなりを中心に据えたコンセプト・アルバムのようだ。音楽的にはほぼ全体がヒューマンな抒情をベースに、泣きのギターとカラフルなオーケストレーション、そこにある種のエキゾシズムを加味した独特のサウンドで組み立てられており、その意味で、やや躁病的に賑々しかった第1作目(ヴィック・エマーソン!)よりは、暖色系のゆったりとしたサウンドで展開された2作目に圧倒的に近い音楽になっている。

 もちろん本作は2009年の製作だからして、時にケルト風、アイリッシュ風な民族色、癒し系&ディーバ系の女性ボーカルなども取り入れ、今風な淡さに目配せしているようなところもあったりするが、1曲あたり数分間の比較的短い楽曲が、ゆるやかなメドレー風に連なり、全体としてはあたかも大河小説のごとき滔々と流れていく音楽的推移、特に1曲目「アンセストロス」の開幕ギター、8曲目「アテン」のドラマチックな感極まるが如きハイライト場面など、ほぼ「魔石ウェンダー」そのものといった感があり、聴いていると、30年という時を越えて、「あぁ、マンドラバンドは生きていたんだな」と、歳のせいか、最近めっきり涙もろくなってしまった元プログレ・オジサンの涙腺はにわかに緩んでしまったのだった。

 ただし、多彩なボーカル陣を始め、錚々たるゲスト陣を迎え、豪華絢爛なロック絵巻に仕立てられた第二作に比べると、ボーカルについては、かなりの部分をロール自身が歌っていることもあり(何人かのボーカリストは参加しているが、特に目を引くような豪華な人選はない)、やや単調さはぬぐい去れず、打ち込みベースのデモをトラック単位で生に差し替えたとおぼしき、リズム・セクションやシンセ・オーケストレーションは、「ザ・サンズ・オブ・アンク」などで見せるモダンなリズムをフィーチャーした楽曲では、「マンダラバンド in 21世紀」という感じで、なかなか楽しくあるのだが、往年の曲調の楽曲では、生のグルーブ感がいささか希薄で、箱庭的になってしまっているのが気にかからないでもない。

 という訳で全体としては78点といったところだろうか。もし、自分が大金持ちだったら、膨大な制作費を彼に与えて、楽曲事にクリス・マーティン、ミリアム・ストックリー、デビッド・ギルモア、ジェフリー・ダウンズ、トニー・レヴィン、アン・ダッドリー、ヴィニー・カリウタといった面々を呼び寄せ、第2作に負けないくらい瀟洒な仕上がりにさせたと思う。そうすれば、この内容である、きっと90点は上げられたと思うのだが....。

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