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2010年1月

2010年1月30日 (土)

DAVID GILMOUR / Live In Gdańsk (NHK BShi)

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 2006年に発表されたデビッド・ギルモアの18年振りのソロ・アルバム「オン・アン・アイランド」に併せて敢行されたツアーの最終公演として、ポーランドで行われたポーランドでのライブ映像。この模様は別途「狂気の祭典」という2枚組のCDにDVDをプラスしたセットとして発売されているが、私の観たのは先の1月10日にNHKのBShiでオンエアされた約90分間のダイジェスト版である。「狂気の祭典」のDVDはクレジットを見る限り、ステージ全曲は収録されておらず、「オン・アン・アイランド」から曲目を中心に選曲されているようだから、フロイド時代の作品も満遍なく収録された本ヴァージョンは案外貴重なのかもしれない(ハイヴィジョンだから、DVDよりかなり画質も良いことだし)。

 さて、オン・アン・アイランド・ツアーの映像といえば、この公演に先立ってロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた模様を完全収録したものが「覇響」と題されて既にDVD化されている。選曲や構成、あとステージ・メンバーも大筋ではどちらも似たようなものであるが、「覇響」が格式高いホールでの演奏だったのに比べると、こちらは、グダニスク造船所という非コンサート会場に5万人のオーディエンスを集めた巨大スクリーン付きの野外コンサートで、いつものステージ・メンバーにプラスしてオーケストラ帯同、しかもツアー最終公演というTPOが大きかったのた、映像から受ける雰囲気はけっこう異なる。全体に楷書体というか、きっちりかっちりやっていた「覇響」に比べると、こちらは各メンバーは余裕綽々で、全体に伸び伸びとしてプレイしているのが印象的だ。

 ステージは、冒頭「狂気」から旧A面からの小組曲で開幕して、その後「オン・アン・アイランド」のほぼ全曲演奏、そして後半はフロイド時代の名曲のオンパレードという趣向である。演奏された楽曲では、「オン・アン・アイランド」のタイトル・チューンが良かった。再結成フロイドの延長線上にあるナンバーといってもいいが、ふたりのギタリストが作りだすハイライト・シーンのフロイド的なドラマチックさはやはり良い。同じくフロイド時代の「戦争の犬」をレイドバックさせたような「ディス・ヘブン」もライブならではグルーブ感があり、ブルージーなギルモアのギターをたっぷりと満喫させてくれる。また、これらの楽曲では、比較的地味にミックスされてはいるが、オケが加わっていることで、「覇響」に比べ、もう一段華やかさも増しているとこも楽しいところである。

 フロイド時代の楽曲は、さすがにこれだけ年月が経つと、いささかフロイド色が薄まり、ちとルーズなギルモア作品として再構成されているような趣がないでもないが、そのあたりは「リック・ライト参加」という刻印がファンには格好のアリバイになっているともいえるかもしれない(笑)。ともあれ、「オン・アン・アイランド」にせよ、フロイド時代のナンバーにしても、ギルモア自身のギターは全く衰えていないのはさすがである。元々、早弾きだのジャズ的な名人芸を売りにする人ではなかったものの、随所に披露されるフレーズの艶、浮遊感、官能性といったところは、枯淡の境地などという言葉とはまだまだ無縁な、全くもって「現役感覚」に満ち満ちているのには、全く頭がさがる思いであった。

 ついでに書くと、ステージでサイド・ギターを担当していたのはフィル・マンザネラだが、このステージを参謀格で仕切っていたのは実は彼ではないか?思えるほどに的確なサポート振り(そういえば「オン・アン・アイランド」はマンザネラもプロデュースに名を連ねていた)、彼のロキシー時代の勇姿を知るオッサンにとって、なんだかとてもうれしくなってしまった瞬間なのであった。


01.Speak To Me / 02.Breathe / 03.Time / 04.Breathe(reprise) /
05.On An Island / 06.The Blue / 07.This Heaven / 08.A Pocketful of Stones / 09.Where We Start /
10.Shine on You Crazy Diamond / 11.High Hopes / 12.Wish You Were Here / 13.A Great Day For Freedom / 14.Comfortably Numb

2010年1月29日 (金)

MANDALABAND III / BC-Ancestors

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 音楽資源の枯渇により、過去のそれのリサイクルが進む現在、往年の名バンドの再結成はもはや珍しいものでもなんでもなくなったが、まさか2009年にかのマンダラバンドが再結成してしまうとは、驚きを通り越して唖然としてしまった。なにしろ彼らが残した2枚のアルバムは、セールス的には惨敗だったし、音楽的評価も日本における異常な高さに比べ、世界的にはそれほど高いものではなかったはずだから、この21世紀に、かのバンドの再結成という音楽的機運が高まることなど、到底ないだろうと思っていたからである。ともあれ、どのような経緯だったのはよくわからないものの、構想30年(ということになるのだろうな、きっと-笑)、制作に実に2年をかけたマンダラバンドの新作の登場である。

 マンダラバンドはとりあえずレギュラーバンドの形態で制作された1作目とアラン・パーソンズ・プロジェクトのようなスタイルで感性にこぎ着けた2作目では、メンバーが異なるが、本作では1作目からはアシュレイ・マルフォード(ギター)、2作目からはBJHのウーリー・ウィルステンホルム(キーボード)、スティーブ・ブルームヘッド(ギター)、キム・ターナー(ドラムス)といった面々に加え数人のゲストを迎えたバンドを基本に録音されたようだ。ただし、本作はデビッド・ロールがホーム・レコーディングしたデモ・トラックを生に差し替えていくという作業でもって完成させた痕跡が随所にあり、制作方法としては一作目とも二作目とも違う、今時なスタイルを完成されたともいえる(なので、名称は「マンダラバンドIII」なのか)。

 さて内容であるが、私が密かに期待した第2作「魔石ウェンダーの伝説」の完結編というものではなく(第2作は「to be continued」で終わっていた)、映画「ハムナプトラ」を思わせるジャケットなどからも予想されるようにエジプトや中近東当たりのエキゾシズムをメインした、新たなストーリーなりテーマなりを中心に据えたコンセプト・アルバムのようだ。音楽的にはほぼ全体がヒューマンな抒情をベースに、泣きのギターとカラフルなオーケストレーション、そこにある種のエキゾシズムを加味した独特のサウンドで組み立てられており、その意味で、やや躁病的に賑々しかった第1作目(ヴィック・エマーソン!)よりは、暖色系のゆったりとしたサウンドで展開された2作目に圧倒的に近い音楽になっている。

 もちろん本作は2009年の製作だからして、時にケルト風、アイリッシュ風な民族色、癒し系&ディーバ系の女性ボーカルなども取り入れ、今風な淡さに目配せしているようなところもあったりするが、1曲あたり数分間の比較的短い楽曲が、ゆるやかなメドレー風に連なり、全体としてはあたかも大河小説のごとき滔々と流れていく音楽的推移、特に1曲目「アンセストロス」の開幕ギター、8曲目「アテン」のドラマチックな感極まるが如きハイライト場面など、ほぼ「魔石ウェンダー」そのものといった感があり、聴いていると、30年という時を越えて、「あぁ、マンドラバンドは生きていたんだな」と、歳のせいか、最近めっきり涙もろくなってしまった元プログレ・オジサンの涙腺はにわかに緩んでしまったのだった。

 ただし、多彩なボーカル陣を始め、錚々たるゲスト陣を迎え、豪華絢爛なロック絵巻に仕立てられた第二作に比べると、ボーカルについては、かなりの部分をロール自身が歌っていることもあり(何人かのボーカリストは参加しているが、特に目を引くような豪華な人選はない)、やや単調さはぬぐい去れず、打ち込みベースのデモをトラック単位で生に差し替えたとおぼしき、リズム・セクションやシンセ・オーケストレーションは、「ザ・サンズ・オブ・アンク」などで見せるモダンなリズムをフィーチャーした楽曲では、「マンダラバンド in 21世紀」という感じで、なかなか楽しくあるのだが、往年の曲調の楽曲では、生のグルーブ感がいささか希薄で、箱庭的になってしまっているのが気にかからないでもない。

 という訳で全体としては78点といったところだろうか。もし、自分が大金持ちだったら、膨大な制作費を彼に与えて、楽曲事にクリス・マーティン、ミリアム・ストックリー、デビッド・ギルモア、ジェフリー・ダウンズ、トニー・レヴィン、アン・ダッドリー、ヴィニー・カリウタといった面々を呼び寄せ、第2作に負けないくらい瀟洒な仕上がりにさせたと思う。そうすれば、この内容である、きっと90点は上げられたと思うのだが....。

2010年1月27日 (水)

KING CRIMSON / In the Court of the Crimson King(40th Anniversary Series)

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 ブログレを語るブログの第一弾が「クリムゾン・キングの宮殿」というのは、あまりにガチ過ぎて、気恥ずかしいところがないでもないのだが、つい先日、クリムゾン結成40周年アニバーサリーということで、本作、「リザード」、「レッド」の3枚が新装発売されたところでもあり、初心に帰る....などと思った訳でもないが、まずは本作を取り上げることにした。

 クリムゾンは既にこれまで全アルバム、そして多数のベスト盤でリマスターの類を何度も行ったが、今回は3枚はそれらとはいささか趣の異なるものである。何が違うのかといえば、本作はリマスター盤ではなく、厳密にいうとリミックス盤なのである。2chステレオにリミックスされた音声が収録されたマスター・テープを整音するのではなく、その上位にあるマルチトラックで収録された大本のテープから新たなリミックスを施したマスターを作り上げているのだ。しかも従来の2chはもちろん、ボーナス・ディスクとしてなんと5.1chに落としたサラウンド・ヴァージョンを収録しているのだからたまらない。早速聴いてみよう。

 まずは、従来からの後継となる2chヴァージョンから、私の聴いたのは24Bit/96KHzというハイ・レゾルーションなグレード(CDは16/44.1)に落とされたDVD-Aヴァージョンだが、一聴してリミックス&リマスターの効果が実感できるなかなかの音質だ。「クリムゾン・キングの宮殿」といえば、しばらく前まではマスター・テープ紛失という事情により、大分下のジェネレーションのマスターを使用したCDが出回っていて、こと音質に関しては長いこと不遇をかこっていたのだが、2004年のリマスター盤ではようやく発見されたオリジナル・マスターを使ってヴェール1枚分音質が向上、今回は更にリミックスが効を呈したのだろう、ほとんど決定打ともいえる音質になっている。

 ボーカル、メロトロン、管楽器、そしてギターが錯綜し、とかくモコモコしたダンゴ状になりがちだったあのサウンドが、オリジナルのムードを裏切らない程度に(これが重要!)見通しの良いサウンドにリフレッシュしているのは、やはりリミックスからやり直しただけのことはある!と納得できる仕上がりだ、もっともマルチからやり直すのだから、ドラムやベースに更なる重量感が加味されるかとも予想していたが、これについてはさすがに加工にも限界があったのか、分離は抜群に良くなったが、音の質感は昔通りナローなままだ。また「風に語りて」の木管アンサンブルからギターに至る中間部、「エピタフ」のクロスフェイド、またまたエディットされた「ムーンチャイルド」、ベーシック・トラックに入っていたと思われるピアノが聴こえてきたりと、従来とは違った聴こえ方をするところも散見する。

 一方、5.1chのサラウンドの方は、マルチマスターが8トラック程度では、楽器単位でスピーカーに割り振ることが困難だったのだろう、サラウンド・ヴァージョンにありがちな派手な効果は見られないものの、ボーカルは終始センター・スピーカーにぴたりと定位しており、これだけてもかなり分離感が上がった印象がある。タイトル・トラックなどレイクボーカルがセンター、前後左右からのマクドナルドのコーラスが聴こえてくるあたりの効果は、実に新鮮さがあるし、メロトロンが響きも後ろにも広がった分、これまでのような飽和感がなくなりずいぶん開放的な音になっているように感じた。またリミックスに際して多少デジタル・エフェクターで残響などを付加しているようなところもあるようで、好き嫌いは当然あるだろうが、少なくとも立体感という点は2chヴァージョンとは雲泥の差がある仕上がりだ。

 ちなみにDVD-Aにはボーナス・トラック扱いで、アルバム全ての曲の別ヴァージョンが聴くことができる。「21世紀」はボーカルとサックス抜きのトリオ・ヴァージョン、「風に語りて」はスタジオ・ランスルー、その他は別ヴァージョンだ。CDの方には「オリジナルの起承転結をいじくらない」という、長年の慣例を破って(?)、ついにボーナス・トラックが入った。「ムーンチャイルド」のオリジナル・ヴァージョン、「風に語りて」のGG&F風なアコスティック・ヴァージョンとミックス違い(ソロが異なる)。「エピタフ」のカラオケなどが収録されている。あと「ウィンド・セッション」は「21世紀」冒頭のSEをあれこれいじくっている模様が収録されているが、とりたてて有難味のあるものでもない。

 という訳で、私にとっては既に完璧な耳タコ・アルバムで、よほどのことがなければ、近年めったに聴こうという気にならない本作ではあったが、さすがにここまで商魂たくましく(笑)、リニューアルされていたせいもあったのだろう、久しぶりに楽しんで聴くことができた。ついでに書けば、このシリーズの他の2作はリミックス&リマスターのための物理的条件が更に良いことは自明なので、本作以上にリニューアルの仕上がりが期待できそうである。

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● 愚にもつかぬ つぶやき