EDGAR FROESE/Aqua
1974年リリースのヴァージンでの第一作。フローゼがオール時代のソロを残していたのかどうか、実ははっきりしないのだが、おそらくソロ作品としてはこれが第一作となるだろう。時期的には73年の「フェードラ」と74年の「ルビコン」の間くらいに制作されたようで、実際聴こえて来る音楽も、調度両作品の狭間のようなものになっている。
具体的にいえば、オール時代のシリアスで重厚な音響に、徐々に抒情的あるいはロマンティックな情緒が浸食し始めたタンジェリン・ドリーム本体の音楽に、ほぼ歩調を合わせた趣きといってもいいと思う。まぁ、フローゼはタンジェリン・ドリームのリーダーだったから、こうなるのも当然といえば当然だろうが、ソロ・アルバムにありがちな趣味的な部分を展開したようなところが全くないのは逆におもしろい。
ただし、タンジェリン本体とは違って、ペーター・バウマンがいないので、例の扇動的なビート感はほぼ皆無、フランケのパーカッシブでアブストラクトな音響センスもないので、音楽はややこぢんまりとしているのはソロ作品だから仕方ないところだろう。まぁ、その代わりといってはなんだが、ここには「悪夢の浜辺」や「フェードラ」を思わせる飛び散るようなシンセの粒子感、白日夢のようにどろーんとしてやけにスペイシーなオルガンの白玉が全面に出ているのが特徴ともいえる。
タンジェリン・ドリームの音楽というのは、テンポの緩急やサウンドのメリハリという点で、一聴して即興的に聴こえても、実は明確にハイライトが設定された構成的なもの(特にスタジオ録音はそう)であるのに対して、ここで聴こえてくる音楽は一見それと似ているようで、ある意味アンチクライマックスの音楽というか、時間のとまった宇宙を永遠に漂っているような感覚があるのが特徴だと思う。まぁ、そのあたりがタンジェリン・ドリーム本体とはまた違った気持ち良さだろう。
収録曲では17分に及ぶタイトル・トラックの「アクア」が聴き物だ。文字通り「水」をキーワードに様々なイメージを膨らませた音楽で、ふざけた表現をすれば「悪夢の浜辺(フェードラ)に至る川の流れ」といった趣きが感じられる。2曲目は「パノフェリア」は単純なシーケンス・パターンにのって様々な音響が繰り出させれるタンジェリン・ドリーム本体の「フェードラ」を思わせる作品だが、さすがにこういう作品ともなると、スケールといいサウンドの多彩さといい、さすがに本体の完成度にはかなわないという気がする。
旧B面の「NGC891」は序盤でオール時代を思わせる荒涼としてスペイシーな音響が展開され、途中から「ルビコン」を思わせるリズム・パターンが入ってきてタンジェリン・ドリーム本体を彷彿とさせる音楽となる。ラストの「アップランド」もオール時代を思わせるスペイシーな音楽で、オルガンの狂おしさが懐かしい。
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